回帰分析(第3回) 外れ値ドリル

回帰分析(第3回) 外れ値ドリル

小売店の顧客構造

月間来店回数5回以下が主力

 商店街を歩いていると布団店があります。布団がどのくらい売れているのか?東京都区部の年間消費額は1,767円(総務省:1世帯当たり年間の支出金額,購入数量及び平均価格)ですから1万円の布団なら1世帯あたり5.6年に1枚購入するような計算になります。今日、商店街の布団店で布団を購入した顧客が次に来店されるのは約5年後です。

 布団にくらべて食料品はいいです。朝に食べて昼にはお腹がすくわけですから1日1回か2日に1回は食料品を求めて顧客が来店されます。ただ問題は自分の店に来店されるのかどうかです。日本に布団店が何店舗あるのか知りませんが、食料品店舗のほうが圧倒的に多いと思います。

顧客数は1か月で15%減少

 平成30年9月1か月間に来店された顧客数(ポイントカード会員)を100とします。私のデータでは、100のうち平成30年10月1か月間に来店される顧客数は概ね85です。1か月後の顧客継続率は単純計算で85%になります。1か月で15%も顧客が減るとあっという間に店がつぶれてしまいます。でもご安心ください「平成30年9月1か月間に来店された顧客数を100」というところにタネがありまして、「平成30年9月1か月間に来店されなかった顧客」を含んでいないから平成30年10月1か月間の顧客数が単純に前月対比85%になるわけではありません。「平成30年9月1か月間に来店されなかった顧客」というのはそれ以降の新規顧客だったり(きわめて少ない)、たまたま9月に来店されなかった顧客です(こちらがほとんど)。通常この85%の顧客を固定顧客といいます。

店舗顧客構造=固定顧客(85%)+浮動顧客(15%)

ドリルダウン

消える顧客が属する領域
 図1左下の丸の部分の密度が濃くなっています。密度が濃いというのは丸の部分にプロットされる顧客数が多いということです。このデータの顧客の約60%が月間来店回数5回以下です。
 固定顧客=85%には、このような来店回数が少ない顧客を多く含んでいます。連続的なデータで確認すると翌月未来店になる顧客の多くが月間来店回数5回以下の領域に属しています。そのほかにも未来店になる領域があります。

 このように分析結果で気になる部分を掘り下げて分析することをドリルダウンといいます。プロットが集中している部分に属している顧客の特徴、逆にプロットが閑散としている部分に属する顧客の特徴を深掘りすると新しい発見があります。

未来店になる顧客の特徴

外れ値の顧客特性をみる

外れ値をドリルダウン
 回帰分析をすると回帰直線から大きく外れた位置にプロットされるデータ点が必ずあります。美しい方程式(R2が高い)を描く目的であれば外れ値を除外します。ところが商売の実践ではこのような外れ値は除外せずその顧客の特性を分析してみるべきです。商売のタネを発見できる可能性があります。

① 来店回数少ない、月間購入金額少ない

多店舗買い回り型顧客です。

 月間来店回数5回以下の顧客が全体の約60%を占めます。言い換えると店舗の「主力」です。翌月の未来店になる顧客(全顧客の15%)の多くは①の領域に属しています。仮に①の顧客全員に翌月も来店していただけれはすごいことになります。
翌月顧客数=当月顧客数×100%+当月来店されていない顧客数

 論理的には「当月来店されていない顧客」分だけ毎月毎月プラスになります。店舗に「繋ぎとめる」「来店回数を増やす」戦略のターゲットになるのが①の顧客です。1か月に最低でも1回は来店されていますから、目のまえにいらっしゃるお客様に「次もご来店ください」ということです。新規顧客獲得・未来店顧客の再来店を目指すよりもコスト的にお得、成功すれば効果も絶大です。

② 来店回数少ない、月間購入金額多い

来店目的は「買い出し」です。 価格意識が高く競合店に顧客を奪われるリスクが相当にあります。未来店になる原因は価格です。

 具体的には、中小規模の介護・福祉施設が入所者の朝食・昼食の食材、おやつ、飲み物を購入しています。来店パターンがあります。毎週同曜日、同じような時間帯に来店されます。月間では5回程度、週2回の購入であれば月間10回程度の来店頻度になります。図では来店回数10回のあたり、購入金額10万円前後にプロットされている顧客です。

 価格意識が高いことが買い出しを目的に来店される顧客の特徴です。パンと牛乳はA店、野菜はB店、米はC店と、購入品目別に購入店舗が決まっているので、購入されるのは毎回同じ商品・同じ数量になります。

 最も喜ばれるサービスは配達です。店舗側の配達コスト、ピッキングコストが心配ですが、基本的に毎回同曜日に同じ商品を購入されるので大きな負担にはなりません。また、配達サービスをすることで価格競争による顧客喪失リスクを軽減できます。しかも、これまで別の店で購入していた商材を当店で購入していただける可能性が高まります。

③ 来店回数多い、購入額がずば抜けて高い

来店目的は業務用です。

 顧客は店舗近隣の小型飲食店です。いわるゆる大将と女将さんで営業している居酒屋のような飲食店です。週1回の定休日がある店が多いので月間来店回数は25回です。午前中に来店されます。図でも来店回数25回、購入額20万円超の顧客を発見できます。
 購入商品は生鮮食料品などの材料が中心で、調味料の購入頻度が一般家庭よりも高いことが特徴です。価格よりも品質を重視します。こだわりの調味料とかも購入されるので、品揃えも重要です。

 1顧客で年間3百万円もの購入額になります。10年間おつきあいできれば3,000万円です!

④ 来店回数が多い、購入額少ない

ご高齢者です。未来店になる理由は残念ながら「自然減少」です。

 ほぼ毎日のように来店されます。買い物は「苦痛」でなく買い物は「楽しい」と思う世代です。買い物に行って友達とおしゃべりをすることも来店目的の一部です。

 高齢になると食が細ります。パックご飯を朝・昼・晩に分けて食べるほどです。従って1人あたりの食料品購入量、額とも減少します。世帯構成人数も減少します。重い荷物を運ぶことがしんどいから、まとめ買いはせず、当日購入、当日消化が原則になることも来店回数が多くなる要因です。

 1人あたりの購入額は低い、ところが高齢化にともない人口自体が増加します。ご高齢者に関して「5人に1人」「4人に1人」のように人口全体に占めるご高齢者比率で語られることが多いのですが、絶対数(人口)が増加しているのです。
総務省統計局ホームページ「高齢者の人口」(外部リンク)