コンビニとカニバリゼーション

コンビニとカニバリゼーション

コンビニ

コンビニの廃業

 最近、我が家の近辺でコンビニ店の廃業が目立つようになってきました。一時期は猛烈な勢いでコンビニの出店があり、とくにエコカーの普及が原因なのかガソリンスタンドが廃業すると、代わってあっという間にコンビニが開店していました。仕事がらコンビニオーナーさんと話す機会がけっこうあります。廃業理由のなかにオーナーさんの高齢化というのがあるようです。
 コンビニが街なかに広がりはじめてから約30年程の時が過ぎオーナーさんの年齢も30歳加齢しました。1年365日24時間営業ですから高齢になるとさすがにキツイ、いわゆる体力の限界、そこら中に競合コンビニ店ができるから昔ほどは儲からない、キツイしサラリーマンの方が給料が安定しているから息子も跡を継いでくれない。10店舗以上を会社組織で運営している場合はまだ店舗を継続できるのですが、1・2店舗のオーナーさんは廃業を選択せざるを得ない状況にあるようです。商店街の店舗と重なってみえます。

コンビニの店舗数・売上高

 データ出典:一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会
コンビニエンスストア統計時系列データ
 コンビニの店舗数を横軸、全店売上高を縦軸に設定して、2008年1月~2018年12月の期間、132か月をプロットした散布図です。
 左側の画像から店舗数と売上高には正の関係を認めることができます。画像をみると一直線ではなく緩やかなS字カーブになっていることに気付きます。
 S字になっている部分を色分けしたものが右側画像です。赤色プロットとオレンジ色プロットは縦方向に伸びています。これは店舗数の増加ペースよりも売上高の増加ペースの方が上回っていることを意味します。中央の青色プロットは店舗数の増加ペースと売上高の増加ペースがほぼ一致している部分になります。

色分けの方法

 色分けの方法は単純です。
期間A=2008年1月~2011年12月(4年間)を赤
期間B=2012年1月~2015年12月(4年間B)を青
期間C=2016年1月~2018年12月(3年間C)をオレンジに設定しています。
 期間A・B・Cに分割して傾向線を表示すると、期間A・Cは傾向線の傾きが垂直方向に向かい、期間Bの傾きは緩やかになっています。

 期間Aは力を貯めていたという見方ができますが、リーマンショックのような景気後退局面があり積極的に店舗を増やす戦略はとりにくかったのだろうと想像できます。客単価も2010年中盤まで低下傾向にあり、客数アップで凌いでいた期間だといえます。
 期間Bは店舗増加戦略に切り替えて、店舗増加につれて売上高も増加しました。駅ナカコンビニが増加したのがこの時期でしょうか、マーケット開拓、あるいは生き残りをかけてた出店攻勢の期間です。景気の回復がみられ、美味しいスイーツの販売などが客単価上昇を後押ししました。
 期間Cは新規出店の勢いが鈍りました。もはや新規出店できるマーケットがないのか、競争の果てのスクラップ&ビルドの時期なのか、景気の先行きが暗いのか・・・。ただ、じわじわと客単価は上昇傾向にあります。現在の動向は2010年後半から2011年の動向に似ています。そうなると期間Bにように、また新規出店して売上高を拡大してゆく局面になるのかどうかです。

カニバリゼーション

カニバリゼーションとは
コンビニA コンビニB 合計
売上高 50 50 100

マーケット規模が100です。現在コンビニAとコンビニBが各50の売上高を有しています。

コンビニA コンビニB コンビニC 合計
売上高 40 30 30 100
カニバリゼーション -10 -20 -30

 このマーケットへコンビニCが新規出店しました。マーケット規模が100で固定されているとすると、新規コンビニCが獲得する売上高30が既存コンビニA・Bから奪われます。このように新規参入者、あるいは既存店の増床などの要因により、今まであった、これからもあるであろう売上高やシェアを奪われる現象がカニバリゼーションです。
 カニバリゼーションにはルールがあります。似ているほどダメージが大きい。新規出店したコンビニCが既存コンビニBの近くならコンビニBの売上高がコンビニAと比較して大きくマイナスになります。また、新規コンビニCのブランドが既存コンビニBと同じ青い看板の店だとすると、やはりコンビニBのほうがより大きいダメージを受けます。

 マーケット内でカニバリゼーションが発生するのはコンビニだけにとどまりません。食料品スーパーマーケット、酒屋、パン屋、本屋、軽飲食店や自動販売機まで、コンビニと同じ商材を販売している既存店もカニバリゼーションの影響を受けます。一方で、ファッションアパレル店、靴屋、釣具屋のようにコンビニと競合しない商材をメインにしている店舗はカニバリゼーションの影響はありません。むしろコンビニができることで既存店の売上がアップする可能性さえあります。釣具屋は早朝暗い時間から営業して釣り餌を販売しています。隣へコンビニができたりなんかすると大喜びです。24時間営業していて弁当やドリンクが買える、駐車場もあって、おかげで釣具屋も大繁盛。このような効果がカニバリゼーションの反対、シナジー効果です。
 似ているほどダメージが大きいからカニバリゼーションは共食いともいわれます。その語源がカルタゴのハンニバル将軍だろうといわれている所以です。

新幹線のホーム

 ここまではコンビニのマーケット規模を100に固定して説明してきました。商圏内にコンビニが2店舗でも3店舗でも、仮に10店舗でもマーケット規模を100のままで考察すれば店舗数が増加するほど1店舗あたりの売上高は減少します。当然、マーケットに存在できる店舗数には限界があります。ゼロサムゲームの様相です。しかし、実際のマーケット規模は固定されているものではなく流動的です。

 クローズドマーケット(閉鎖商圏)を想定します。新幹線のホームにあるコンビニです。新幹線のホームの売店といえばキオスクでしたが、いまではコンビニが主流になってきたように思います。新幹線のホームというマーケットはクローズドマーケット(閉鎖商圏)です。新幹線の乗降客だけが商売の対象になります。そういった意味では固定化されているマーケットのように見えます。

それでも店舗数が増える

 新幹線ホームの5号車付近にコンビニあります。売上高を100とします。現在ホームあるコンビニはこの1店舗だけです。このホームに全く同じブランド、同じ品揃えのコンビニを新規出店させます。出店場所は10号車付近です。

現在 5号車付近 合計
売上高 100 100

 

2店舗の場合 5号車付近 10号車付近 合計
売上高 70 70 140
カニバリゼーション -30

 5号車付近のコンビニの売上がこれまでの半分の50になることはありません、いままで5号車付近のコンビニを利用していなかった15号車や16号車の乗降客があたらしいマーケットとして創造されるからです。もちろん駅前のコンビニや新幹線の車内販売はカニバリゼーションの影響を受けますが、現状においてコンビニが新規出店するマーケットがまったくなくなっているわけではありません。

交差点のあっちもこっちも同じブランドのコンビニ

 交差点の道路をはさんで同じブランドのコンビニが2店舗営業している光景をみかけます。実はどちらも同じオーナーの店舗です。カニバリゼーションがおこり1店舗あたりの売上高は交差点に1店舗だけのときよりも下がります。それが解っていながらなぜ店舗を増やすのか?それは道路の向かい側にライバルブランドのコンビニができると困るからです。新幹線のホームのコンビニと同じ原理です。
 オーナーとしては1店舗増やすのであれば、既存の店から離れたロケーションに出店して2店舗合計で200の売上高を狙いたいものです。ところが向かい側へライバルブランドが出店すると自分の店の売上高が100から70に減少します。向かいの店も自分がオーナーになって、2店舗合計で140の売上になったほうがマシだろうと考えます。オーナーの2店舗掛け持ちも可能です。何しろすぐ向かいの店ですから。共食いどころか自分食いの状況です。かくしてコンビニの新規出店はまだしばらくのあいだ続きそうです。