外国人数 国勢調査と在留外国人統計

外国人数 国勢調査と在留外国人統計

日本国内の外国人数

国勢調査の外国人数
国勢調査 外国人数推移

出典:政府統計の総合窓口(e-Stat)(https://www.e-stat.go.jp/
政府統計名 国勢調査
提供統計名 平成27年国勢調査
提供分類1 最終報告書「日本の人口・世帯」統計表(https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200521&tstat=000001080615&cycle=0&tclass1=000001124175&second=1&second2=1)
 データ出典:表番号48 国籍(12区分)別外国人数-全国(大正9年~平成27年)

 2019年1月18日、平成27年国勢調査 最終報告書「日本の人口・世帯」統計表が政府統計の総合窓口(e-Stat)に掲載されました。
 個人的に国勢調査データの市区町村の人口とかポリゴンデータをいつも活用させていただいています。

 今回発表された53の統計表のなかに「外国人」というデータがあって、平成27年(2015年)の外国人数が1,752,368人になっています。昨年から外国人労働者数などがしばしばニュースになっていたので、概ね日本在住の外国人は260万人くらいという数字が頭の隅にありました。3~4年で1.5倍!ハイペースで増えているのかと思ったら・・・

法務省発表の外国人数

法務省、平成30年6月末現在における在留外国人数について(速報値)(http://www.moj.go.jp/nyuukokukanri/kouhou/nyuukokukanri04_00076.html
【平成30年6月末現在】公表資料(http://www.moj.go.jp/content/001269620.pdf
国籍・地域別在留外国人数の推移

 法務省の資料では、平成27年(2015年)の外国人数は2,232,189人です。両者を比較するとこのようになります。

 調査結果2010年2015年
A法務省在留外国人数2,087,2612,232,189
B国勢調査外国人数1,660,0701,752,368
 差(A-B)427,191479,821
 対比(B÷A)0.7950.785

 40万人以上の差があります。法務省発表数値よりも国勢調査結果の方が20%以上少なくなっています。ちなみに国勢調査の「外国人数」と法務省の「在留外国人数」の定義が違うのかと思い調べてみましたがどうやら同じような感じです。

国勢調査と人口統計

 国政調査はいま話題になっている「全数調査」です。企業でいうところの「実地棚卸」です。「実地棚卸」は会計年度末の在庫を実際に数えるものです。小売業では夜を徹して店頭の商品数を数えたり、冷蔵庫内の商材の目方を量ったりします。

 期末決算で「実地棚卸」結果の在庫高と帳簿上の在庫高の差異を一般的には商品ロスとして計上します。つまり、毎会計年度末には在庫高の実際と帳簿が一致します。
 人口統計も私が見る限りでは、5年に1回実施される国勢調査結果と帳簿(住民台帳などの動態データ)を遡及的に一致させています。例えば2015年10月1日の人口は、どの自治体が公表している数値もすべて国勢調査結果と一致しています。

 法務省の在留外国人数は在留資格者数ですから帳簿上の人数だろうと考えることができます。2015年も2010年も法務省の在留外国人数を国勢調査結果に一致させていないということは、人口統計のように棚卸数と帳簿数を一致させるものではないということなのだろうと思います。

なぜ?これほどの違いがあるのか

 40万人以上、約20%もの違いがなぜ発生するのでしょうか。商売でいえば、仕入れした商品の約20%がどこかへ消えてしまったことになります。40万人の外国人がどこかへ消えたのか。国勢調査員に発見されないように隠れているのか。そのようなことはないと思います。

 総務省や法務省何に問い合わせる勇気はなく、なんでかな~と思いながら調べているとある論文を発見しました。

研究の対象になっているようです

参考文献

京都大学大学院文学研究科教授 石川義孝先生
人口学研究(第37号)2005.11 83ページ~「外国人関係の2統計の比較」(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jps/37/0/37_KJ00009383097/_pdf

 「2000年時点における『国勢調査報告』と『在留外国人統計』の外国人数データの比較を通じ、その数に違いが生じる問題が詳しく解明されるべき余地がある。」(83ページから引用) 
 つまりはっきりとした原因は解明されていなくて研究の対象になるものだということです。

石川義孝先生の結論

 外国人数が『国勢調査報告』より『在留外国人統計』で多くなる理由に関しては
・調査時点が違うこと
・<短期滞在>という在留資格をもつ外国人が後者の統計にのみ含まれること
・外国人登録した外国人が国勢調査の時点で再入国許可を持って日本を出国していること
・登録外国人が国勢調査に非協力的なため同調査で計上されない可能性が考えられること
・『国勢調査報告』の外国人数が多くなる理由として、特に米軍基地で働くアメリカ国籍の民間人にとっては、外国人登録を行う必要が小さい
*それぞれの理由ごとに該当すると考えられる外国人数を想定した結果、国勢調査に非協力的という理由が最も重要である
(以上同92ページから抜粋)

 調査時点というのは国勢調査は10月1日、在留外国人統計は年末の違いです。なにしろ40万人の差ですから先生が指摘されるように調査時点とかの違いよりも国勢調査に非協力的とう理由に頷けます。