デシル分析 小学生時代に大苦戦したデシリットル

デシル分析 小学生時代に大苦戦したデシリットル

10分の1

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 アメリカ旅行で困ること。温度がが全くわからない!エアコンの温度設定目盛(デジタル式よりもつまみを回すタイプのほうが圧倒的に多いような気がする)をどこに合わせれば快適な室温になるのか?天気予報を見ても明日の気温がまるでわからなくて、ニューヨークからシカゴへTシャツで移動したものだからシカゴへ着いたら寒いの何の。

 そのむかし、天気図の気圧はミリバールだったと記憶しています。いつの間にかヘクトパスカルになっています。音量はホンがデシベルになりました。デシベルの「デシ」というのが1/10のことで、小学校の算数で大苦戦したデシリットルの「デシ」と同じような意味だそうです。
 小学生のときに苦労して覚えたデシリットル、日常生活でお目にかかったことは皆無です。ところが分析の世界でひっそりと生きているのです。

よく見かけるまちがい
顧客No. 月間購入金額 購入金額順位
001 10,000 1
002 10,000 1
003 8,000 3
004 7,000 4
005 6,000 5
006 5,000 6
007 4,000 7
008 3,000 8
009 2,000 9
010 1,000 10

 データには顧客が10人います。購入金額降順に並べて順位をつけます。顧客No.001と002の2名が月間購入金額10,000円です。月間購入金額降順で順位付けすると1位が2名います。このデータをデシル表に変換します。

デシル 顧客数 購入金額
D1 2 10,000
D2 0 9,000
D3 1 8,000
D4 1 7,000
D5 1 6,000
D6 1 5,000
D7 1 4,000
D8 1 3,000
D9 1 2,000
D10 1 1,000

 顧客数が10人ですから、1デシルあたりの人数は必ず1になります。ここが重要です。このデシル表はデシルD1が2名、デシルD2はゼロです。これではデシルが全部で9個しかありません。つまり全標本が10分割ではなく9分割になっているのでデシル表ではありません。デシルD2の顧客数がゼロであるためデシル分析ができません。

 等分・不等分にかかわらず表のように購入金額を10分割するデシル表は間違いです。標本数、今回の場合は顧客を10等分してデシルをつくります。顧客数合計が1万人なら1デシルあたりの顧客数は千人です。したがって、下表が正しいデシル表になります。デシルD1とD2の月間購入金額が同じでもOKです。これがデシルです。

デシル 顧客数 購入金額
D1 1 10,000
D2 1 10,000
D3 1 8,000
D4 1 7,000
D5 1 6,000
D6 1 5,000
D7 1 4,000
D8 1 3,000
D9 1 2,000
D10 1 1,000



デシル分析でわかること

FSP(フリークエント・ショッパーズ・プログラム)

 お買い物100円ごとに1ポイントというのは誰にでも平等な販売促進手法です。では、お買い物100円ごとに1ポイントの人もいれば5ポイントの人もいる場合はどうでしょうか。通常の商売では上顧客様という人々がいます。たくさん購入してくれる人、頻繁に来店してくださる人、高額品を購入してくれる人、ときには、有名人や名士など商売への貢献度が高い顧客です。商売人としてはこれら上顧客を失うとたちまち売上が大きく減るので、何とかして店へ繋ぎとめておく必要があります。ですから、商売人は上顧客にたいして他の顧客よりもサービスを手厚くするわけです。顧客側からみると不平等ですが、商売人側からみると”公平”なのです。

 そうなると店舗は顧客別のお買い上げ額をあらかじめ知っておく、そして顧客別にランキングしておく必要があります。そのことでランク別サービスを計画し実施することが可能になります。

パレート図

デシル分析 パレート図 分析ツール:タブロー
 デシル表からパレート図を作成します。図から店舗売上の80%は売上上位6人で構成されていることがわかります。商品のABC分析でも同様ですが、通常は店舗売上の70%~80%を構成する顧客が上顧客に定義されます。図の内容であれば顧客No.001~006の顧客が上顧客です。店舗はこの6人にたいして割引のDMを送付したり、ポイントを多めに付与したり、他の4人よりもサービスを手厚くします。デシルD1とD2の顧客は絶対に失いたくありません。顧客ランクでいうとSランクですから更にサービスを強化します。この2名を失うと3店舗売上高の約35%を失います。このように上顧客に対するサービスを手厚くして長いお付き合いを目指す手法がFSP(Frequent Shoppers Program)です。

スケールは動くもの
デシル 顧客数 購入金額
D1 1 9,000
D2 1 9,000
D3 1 8,000
D4 1 7,000
D5 1 6,000
D6 1 5,000
D7 1 4,000
D8 1 3,000
D9 1 2,000
D10 1 1,000

 顧客No.001と002の月間購入額がそれぞれ1,000円低下した場合を考えてみます。デシルは顧客を10等分するから各デシルに属する顧客数は1のままです。月間購入額が全体的に低下したことで各デシルの月間買上金額が低下します。デシル分析では、分析のたびにスケール(この場合は月間購入額)が変化します。今回の変化でデシルD1とD2のスケールが10,000円から9,000円へ減少しました。


月間購入金額をスケールにしてFSPを実施する場合

 例えば月間購入額が10,000円以上の顧客はポイントが常に一般顧客の5倍、このようなFSPを実施しているとします。顧客No.001と002の月間購入額がそれぞれ10,000円だったときにはこの2名が5倍ポイントに対象者でした。ところが月間購入額が9,000円になったとたんに5倍ポイント対象者ではなくなります。

 顧客ランクを月間購入金額で固定する場合、店舗にとって最大のリスクはサービス低下が原因で顧客No.001と002の来店が途切れることです。一方でメリットは売上増減に比例して販促費用を増減できること、顧客への訴求がわかりやすく月間10,000円の購入を目指して来店されることが期待できる、レジやポイントシステムの設定が簡易なことなどをあげることができます。ですからデシルよりも月間購入金額を固定スケールにした、「間違いデシル表」でFSPを運用しているのが実態です。特に顧客への訴求がわかりやすいことがポイントになっています。
 デシル通りのFSPを実践している店舗はほぼありません。FSPを構築あるいは見直しするときにデシル分析を行っています。FSP以外での用途は、各デシルの購入額がどのように推移しているか、特に購入額上位デシルの動向を常時チェックしておくことが重要です。その他には各デシルの特徴を分析することもあります。

デシルの属性

 各デシルの顧客の住所、年齢、購入商品などの属性から各デシル特徴をみつけようとする分析が一般的に行われています。しかし、その分析結果から新たな知見を得ることができるのかどうかというと疑問です。小売店舗でいえば購入額上位デシルに属する顧客は、店舗の近くに住んでいる、50代・60代、売れ筋商品を購入しています。往々にして当たり前の結果になります。デシルの違いは来店回数の違いへと収斂せざるを得ません。

デシルが果たした役割

 店舗の顧客へ対するサービスは顧客全員に、一斉に、一律でおこなうのがかつてから今でも一般的です。新聞折込チラシで全員へ告知する、毎週火曜日にポイントアップキャンペーンを実施する手法です。デシルとFSPは少なくとも全員・一律サービスへくさびを打ち込みました。それでは一斉はどうか。残念ながら火曜日に買い物に行けない顧客はポイントアップサービスを享受することができません。月間購入額でデシルをつくりFSPを実施することの限界がここにあります。毎週火曜日ポイントアップキャンペーンから、好きな曜日を顧客に選んでいただく。顧客別でポイントアップ曜日が違うサービス、誰か、どこか、実現してほしい!